金融社畜日記~証券リテール残酷物語~

時代錯誤な昭和の趣を残す職場、大手証券会社(リテール!)で働く人(働いていた人)の現在進行形日記です。良いところ悪いところ投資に役立つちょっとした豆知識を載せていきます。

証券会社のリテール営業は変わったか③(広告審査:自由な営業禁止!)

対面証券の場合、訪問をして顧客と対話をしながら商談をすることが多いです。対して興味もなくしたくもない世間話の隙間を狙って、自分でもよく理解していない商品を顧客に買ってもらうのが、一般的な証券リテールセールスの姿でしょう。その中で、例えば投資信託であれば、目論見書という分かりにくい運用会社が作った能書きを顧客に渡すことが法令で義務づけられており、到底顧客に理解させるには難しい内容です。しかし、これに加筆したり、またこれに関連する資料を自分で調べたりしてまとめたものを顧客に渡すことはダメなのです。

就職活動中の学生さんは、証券会社の営業は様々な金融商品を通して顧客の資産形成に役立ち、自分も高給取りになれるなんて考えていますけれども、実際には営業活動に自由はありません。

実を言うと、金融機関が顧客に交付する書類はすべて広告審査と言って、あらゆるコンプライアンスという色眼鏡でチェックをされており、徹底的に会社に不利益となる瑕疵が見つからないような書類を準備されているのです。

昔の証券マンが武勇伝のように語ることは、今はほとんど法令違反に近いことで、例えば金銭の授受(商品券やブランドもの)や接待にすら厳しい規定があるのです。

これを推して、広告審査があるので、クリエイティブな営業をお望みの方は、入社しても体育会系の押し売り営業になってしまう可能性があります。

逆に言うならば、セールスは皆同じ条件で勝負できるので、体力と気力さえあれば頭を使わずに営業ができる可能性が高く、売れば売るだけ評価がされ、いつの間にか管理職で高給取りだなんて人はたくさんいます。

私もセールスをやっていると、まあ、一度スクリプトという自分の問答集を作れば、後は適当に懐の深い顧客(金をたくさん持っているマルい客:マルい客というのは証券会社とどれだけ損をしようが底なしに付き合ってくれる顧客のこと)に数本電話を掛ければ予算(ノルマ)が終わってしまうくらい、なこともありました。

なので、広告審査は顧客にお礼の手紙を書く時ですら、支店長や業務管理部長(コンプライアンス部長)に一度添削されていました。ということは顧客渡すための巻物や、顔写真付きの無機質なプロフィール(男性セールス顔写真入りなんて誰も興味ないよな)が6月ごろの社内研修終わりの新人から送られてくるときも、苦笑しながら広告審査されているのかなと微笑ましいです。